意見表明


時間外労働の上限規制に関する声明

2017年3月17日
東海労働弁護団
幹事長 後藤潤一郎

 安倍内閣が「働き方改革」の一環として導入をめざしている時間外労働時間の上限規制をめぐって、「月45時間」「年間360時間」を原則としつつ、繁忙期には「月100時間未満」かつ「2ヶ月ないし6か月平均80時間」とし、月45時間を超える時間外労働は6か月までとすることで、政労使の合意が成立したとの報道がなされた。

 東海労働弁護団は東海地方で労働者の権利擁護のために活動する法律家団体として、過労死、過労自死等の事件を通じて、労働者の長時間労働の実態を目撃してきた。このような経験を踏まえ、東海労働弁護団は、労働者の心身を蝕むような長時間労働を根絶するためには、労働基準法を改正し、36協定でも超えることができない時間外労働の上限を定め、違反企業に罰則を科すことが必要であると考える。
 しかしながら、報道された案が容認しようとしている「月100時間未満」「平均80時間」などという例外は、厚生労働省が定めた『脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準』(平成13年12月12日基発第1063号)「過重負荷の有無の判断」に記載されている時間外労働の時間(1か月間におおむね100時間又は2か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね80時間)に該当するものである。名古屋高等裁判所平成29年2月23日判決では、虚血性心疾患で死亡した労働者について、「発症前1か月間の時間外労働時間は少なくとも85時間48分であり、この時間外労働時間数だけでも、脳・心臓疾患に対する影響が発現する程度の過重な労働負荷であるということができる。」と判示し、認定基準の1か月の時間外労働が100時間未満の場合でも脳・心臓疾患を発症させる業務の過重性があったことを認めている。
 「月100時間未満」「平均80時間」の時間外労働の容認は、裁判所によって過労死の原因となる時間外労働と認められており、このような時間外労働時間の例外は、上限基準として極めて不適切なものであることは明らかである。
 電通過労死事件の遺族である高橋幸美氏は「人間のいのちと健康にかかわるルールに、このような特例が認められていいはずがありません。繁忙期であれば、命を落としてもよいのでしょうか。命を落としたら、お金を出せばよいとでもいうのでしょうか。娘のように仕事が原因で亡くなった多くの人たちがいます。死んでからでは取り返しがつかないのです。」とのコメントを発表している。繁忙期ならば命を落としかねない労働を許容して良い道理は全くない。
 労働基準法で法定労働時間が定められ、時間外労働は本来例外である。これ以上の過労による人の死亡を防ぎ、「KAROSHI」という言葉を死語にするためにも、労働者の命と健康を守り、生活と仕事の調和を図ることができる上限規制が不可欠である。当弁護団は、時間外労働時間の上限規制として、少なくとも厚生労働大臣告示で定める「月45時間以内」「年360時間以内」に基づいて規制がなされるべきであると考える。

以上

【声明文PDF】


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