No.163 労整理解雇事件、終結のご報告「ティープラン事件」

2013/05/20(月)

■労整理解雇事件、終結のご報告「ティープラン事件」      伊藤 麻衣子       

■日本労弁全国常幹報告                    樽井 直樹        

■「ソニーによる美濃加茂サイト閉鎖で労働者・住民の生活はどうなっているのか?」

 「美濃加茂なんでも相談会」のまとめと今後の課題        岸 茂夫     

                                           

                                                      

労整理解雇事件、終結のご報告「ティープラン事件」

なかむら公園前法律事務所

伊藤麻衣子

 2013年2月、整理解雇の事件につき和解が成立しましたので、ご報告いたします。

1 事案の概要

   被告は、岡崎市内にある特定派遣を業とする派遣会社であり、原告らは被告会社の従業員でした。2009年8月、被告は、原告らを含む12名の従業員を解雇しました。これは、被告の従業員の半数近くにあたる解雇者数でした。
 被解雇者の一部(4名)が労働審判を申立て、名古屋地方裁判所労働審判委員会は、被告が各申立人に対し解決金を支払うよう命じる労働審判を下しました。被告が労働審判に対して異議を申し立てたため本訴に移行したところ、名古屋地方裁判所岡崎支部が本件解雇を有効とする判決を下しました。そのため、原告らの内3名が控訴しました。

2 争点

  本件では、整理解雇の4要件がもれなく争点となりました。被告は、①リーマンショック後の経営不振により人員削減の必要性が高かった、②解雇回避措置は尽くした、③人員選定基準は、派遣に出ていなかった従業員(たまたま派遣契約が終了した者を含む)を解雇の対象としたのであり、客観的で合理的な基準である、④解雇の説明については、定例会議で配布した資料に「(経営状況悪化に際し、経費削減のために親睦行事を廃止するなどの説明に加えて)更なる対応策としては整理解雇もある」旨記載があったので、退職勧奨時に個々の対象者と話をしたので説明・協議は尽くした、等と主張しました。

  しかし、①被告は解雇に先立つ試算をしておらず、何名の従業員を解雇するかの検討もしていませんでした。また、解雇の傍らで新規採用も行っていました。また、②被告は、解雇に先立つ希望退職募集も給与の減額もしておらず、役員報酬の減額も不十分でした。原告らが解雇された後には、残った従業員らに対して賞与の支給もありました。さらに、③そもそも派遣会社で「派遣契約が終了したから解雇する」ということが許されるものではないことはいうまでもなく、被告の基準は合理性のないものでした。更に会社は、退職理由証明書の記載を人によって差をつけたり、「お前は○○と仲がいいから」「解雇の理由がある人とない人がいる。悟ってほしい。」と代表者が発言するなどしており、好悪の情によって被解雇者を選定していることがうかがえました。④説明・協議も、実質的なものは行われず、従業員から説明を求めた面談でも、被告代表者が説明を拒否する場面がありました。

3 第一審判決

  第一審判決は、いわゆる4要素説を前提に、被告の主張をそのまま認定するだけの内容でした。紙幅の都合で詳細は割愛しますが、「リーマン・ショックの影響で経営が苦しかったので人員削減の必要性が高い」という一点に立脚した判断でした。いわゆる4要素説に立つとしても、各要件(要素)の充足性は慎重に判断される必要がありますが、第一審判決は、人員削減の必要性が高ければその他の要件(要素)は満たさなくともよいかのように判断した点で、問題の大きいものでした。また、人員削減の必要性の認定も具体性を欠いており、経営状況の悪化だけで漠然と解雇の必要性を認めた印象が否めません。

4 控訴審

  控訴審では、従業員と代表取締役との面談の録音を証拠として追加提出し、解雇が無効であることの主張を補充しました。

  結論としては和解で解決となり、敗訴の危険性や被告の資力など諸事情を加味した判断ではありましたが、個人的には一審判決が非常に残念でしたので、高裁の判断も見てみたい気もしました。

以 上

 

 

 

 

 

日本労弁全国常幹報告

 

事務局長 樽井直樹

 3月23日に大阪市内で日本労弁の全国常任幹事会が開催されました。東海労弁からは樽井(愛知)と小貫(三重)が出席しました。

 主な議題は改正労働契約法について、労働裁判改革について、安倍政権下での労働法制の規制緩和の動向などでした。

 4月1日から全面的に施行された改正労働契約法については、積極面を活用していくために、労働弁護団が組合との学習会や懇談をもつ必要が確認されました。労働裁判改革については、鵜飼会長が、今後数年かけて実現していくべき労働弁護団の課題であると問題提起、当面労働審判制度の改善を図るため、全国各地で労働審判員との懇談などに取り組むよう呼びかけられました。アベノミクスの「3本の矢」の一つとして成長戦略があげられ、規制緩和の合唱が起こってます。財政経済諮問会議、産業競争力会議、規制改革会議などで労働法制が取り上げられ、解雇自由化が唱えられています。労働紛争の実態をもっとも知る立場にある労働弁護士は、日本においては解雇規制が機能していない実態に問題があるとの声を上げていかなければならないことが強調されました。

 そのほか、大阪における「維新の会」との闘いの現状報告や労働者教育推進法の制定を求める運動の提起などもなされました。

 次回の全国常幹は、6月22日に名古屋で開催される予定です。

  団員の積極的な参加をお願いします。

 

 

 

 

 

「ソニーによる美濃加茂サイト閉鎖で労働者・住民の生活はどうなっているのか?」

「美濃加茂なんでも相談会」のまとめと今後の課題

美濃加茂なんでも相談会実行委員会

事務局長  岸 茂夫

(岐阜県労連・事務局次長)

 

【1:はじめに】

 ソニーは、子会社であるソニーイーエムシーエスの美濃加茂サイトを今年3月末に閉鎖しました。この閉鎖に至る過程にて、2千数百人の労働者に対して、配転・早期退職・雇い止めが行われました。そして、現在(4月1日時点)、新聞報道によれば、1000人を超える失業者が加茂地域に溢れています。このままでは、今後、失業者への雇用保険の給付が切れること(切れた方も相当数有り)も進行し、大量の生活困窮者が発生します。地域経済へも大きな打撃となっていくことが予想されます。

 こうした経過・事態の中で、私たち美濃加茂なんでも相談会実行委員会(実行委員長:佐久間良直弁護士)は、2月17日(日)と4月14日(日)、2回の相談会を開催しました。この取り組みのまとめ、及び、今後の課題について報告します。

 報告の前に用語解説をします。

 

【2:用語解説】

① ソニー株式会社(東京都港区所在、社長兼CEO{最高経営責任者}は平井一夫氏)

② ソニーイーエムシーエス株式会社(東京都港区所在、代表取締役社長は岸田光哉氏)

 「ソニーEMCS」との表記もあります。ソニーの子会社。

③ 美濃加茂サイト(美濃加茂市本郷町所在であった、責任者は市橋英樹氏であった)

 ソニーイーエムシーエスの工場の一つ。閉鎖前は、主にデジタル一眼カメラの交換レンズを生産。ソニーイーエムシーエスの事業所は、美濃加茂サイト以外には、木更津サイト・幸田サイト・稲沢サイト等があります。

 美濃加茂サイトの前身は、「ソニー美濃加茂株式会社」であり、1980年創立。同年、美濃加茂市議会にて、「工場誘致条例」が制定され、同条例に基づき、同社は、3年間、約3億円(と言われている)の固定資産税相当額の奨励金が交付されています。

 2012年10月19日の3月末閉鎖発表時、直接雇用社員は800人ぐらい、派遣・請負労働者は、1600人ぐらい。派遣・請負労働者の多くは外国人で、ブラジル人が一番多く、次がフィリピン人。

④ 派遣・請負会社

 ()ディーピーティー株式会社(名古屋市所在、代表取締役社長は竹本昭生氏)

「DPT」との表記もあり。美濃加茂サイトに労働者を派遣し、また、美濃加茂サイト内のDPT美濃加茂事業所(美濃加茂サイト社員と一緒にならないように区画されているはず)にて美濃加茂サイトの業務の請負をしていました。TPP(環太平洋経済連携協定)と混同しないように。

 (2) 株式会社スリーエム関東(岡崎市所在、代表取締役社長は板橋秀樹)

 (3) トゥエンティ ファースト株式会社(東京都所在、代表取締役社長は小泉一秀氏)

 美濃加茂サイトには、(1)(2)(3)以外にも、派遣・請負会社がいくつか入っていました。

 美濃加茂サイトで働くDPT社員は、10数名の派遣労働者と500名ぐらいの請負労働者(2012年10月頃)。美濃加茂サイトに労働者を派遣していることが確認されているのはDPTのみ。美濃加茂サイト全体では、直雇用以外の労働者では、派遣労働者は少なく、請負労働者が圧倒的に多い。

⑤ 派遣労働者の例 : 美濃加茂サイト社員より指揮命令を受けるDPTの労働者

⑥ 請負労働者の例:DPT社員より指揮命令を受けるDPTの労働者

⑦ 偽装請負の例:請負労働者であるDPTの労働者が、美濃加茂サイト社員より指揮命令を受けること。 

⑧ JMIU:「全日本金属情報機器労働組合」の略

 美濃加茂サイトで働いている(働いていた)労働者は、現在、約100人が、JMIU愛知支部・可児加茂分会・ソニー班に加入しています。約100人の内、圧倒的多数はブラジル人であり、日本人はわずか数名。フィリピン人はいません。

 JMIU愛知支部・可児加茂分会は、加茂地区労連に加盟しています。加茂地区労連は岐阜県労連に加盟しています。

⑨ ソニー閉鎖問題対策会議

 関係する労働組合がつくっている組織であり、愛労連.岐阜県労連、加茂地区労連、JMIU愛知地本、JMIU愛知支部可児加茂分会ソニー班等で構成。以下、「対策会議」と略。責任者は、吉良多喜夫愛労連事務局長。岸もこの「対策会議」に岐阜県労連代表で参加しています。

⑩ 「ソニー美濃加茂工場閉鎖撤回を求め、労働者の雇用と生活.地域経済を守る岐阜県民の会」

 関係する労働組合や住民、各種団体で構成。以下、「県民の会」と略。会長は、笹田参三自由法曹団岐阜支部長。岸はこの「県民の会」の事務局長となっています。

⑪ 美濃加茂なんでも相談会実行委員会

 相談会の実行委員会で、みのかも法律事務所、愛労連、岐阜県労連が構成団体。協力団体は、ぎふ反貧困ネットワーク、反貧困ネットワークあいち・サポートセンター結。

⑫ フードバンクぎふ

 生活困窮者に対して、食料を無料で届けている岐阜県内の団体。代表は、赤星守雄氏。本来食べられるにもかかわらず、廃棄されている食料(品質に問題ないのに、印字ミスやパッケージ破損、賞味期限が近いため廃棄されている食料)を、企業から提供してもらって、その食料を無料で届けています。 

 

【3:開催の趣旨】

 実行委員会の準備会段階では、今回の大量失業者・生活困窮者の発生に際して、「対策会議」・「県民の会」が取り組んでいるソニーに対して社会的責任を求める運動や雇用創出の運動とともに、実際に困っている多くの労働者の不安・悩みに寄り添い、解決の道筋を具体的に明らかにして、一人の労働者も路頭に迷わせることの無いようにすることも、大切な取り組みと考えました。また、この美濃加茂サイト閉鎖にて地域経済への打撃は大きく、地域住民の不安も広がっており、こうした方々への相談対応も必要と考えました。

 こうした立場から、実行委員会を組織し、美濃加茂なんでも相談会を開催して、悩める労働者や地域住民の相談活動を行い、支援・救済の取り組みをすすめることとしました。

 

【4:準備の取り組み】

 開催までの準備としては、以下の取り組みを、2回とも実施しています。

① 実行委員会体制・支援体制の構築

 発案者は、愛労連の榑松議長です。同議長より、岸が提起を受け、関係諸組織に働きかけて、実行委員会発足となりました。実行委員会では、愛知の”派遣村”の経験を愛労連の榑松議長より詳しく聞き取り、実施要綱を作成して準備を進めてきました。

② 後援について

 2回とも、岐阜県・美濃加茂市・可児市・(公財)岐阜県国際交流センターより、後援を受けました。2回目は、岐阜新聞・岐阜放送の後援を受けました。

③ 宣伝について

 チラシは、2回とも、日本語・ポルトガル語・タガログ語・英語で同じ内容を記載したA3裏表のものを作成しました。2回とも、3000枚以上を地域配布しました。また、JMIUソニー班ルートの配布、繋がりのあるフィリピン人等への配布も実施しました。さらには、美濃加茂市と可児市のキリスト教の教会(カトリック、プロテスタント問わず)にもチラシを持って行き、宣伝の依頼をしてきました。

 2回とも、岐阜県等の後援を受けたこともあり、市役所やハローワークにチラシを置いていただけ、また、美濃加茂や可児のケーブルテレビの案内放送もお願いできました。

 2回とも、労働組合や(公財)岐阜県国際交流センター等では、ホームページに掲載されました。

 2回とも、中日新聞・岐阜新聞・毎日新聞等で事前案内が掲載されました。

④ 相談員体制の準備

 初回の相談員は、弁護士13名・司法書士1名・行政書士2名・看護師1名・生活保護専門家3名・市議会議員4名・税理士1名・労組役員2名・行政専門家3名・民商事務局1名、合計31名でした。

 第2回の相談員は、弁護士8名・税理士1名・司法書士2名・看護師1名・市議会議員3名・行政専門家4名・生活保護専門家3名・職業訓練専門家1名・労働組合役員2名、合計25名でした。

 2回とも、多くの方が、事態の深刻さを受け止めて頂き、快く、相談員としてご協力をいただけました。

⑤ 通訳体制の準備

   初回は、ポルトガル語6名、ポルトガル語とスペイン語1名、ポルトガル語とスペイン語と英語1名、スペイン語と英語1名、タガログ語1名、英語1名、合計11名でした。

 第2回は、ポルトガル語7名、ポルトガル語とスペイン語1名、ポルトガル語とスペイン語と英語1名、タガログ語1名、タガログ語と英語2名、合計12名でした。

 

【5:初回の相談会・まとめ】

 相談件数は、30件で、多くが、ブラジルやフィリピンなどの外国人でした。相談内容(1件で複数あり)は、生活相談(生活保護・福祉資金・借金など)5件、住宅相談(寮等からの退去・新たな住宅・住宅ローン)11件、税金相談7件、社会保険相談5件、雇用保険相談4件、労働相談(解雇・雇い止め・配転・有休・賃金など)12件、その他4件でした。

 「年末に解雇、手持ち資金8000円」などの生活困窮者3名に対しては、後日、美濃加茂市に相談対応した相談員とともに生活保護申請の対応をしました。3名全員が外国人のため、実行委員会では、市に通訳の配置を要請しました。

 地域住民へも影響は広がっていることもわかりました。ソニーに駐車場を貸している方は、3月末で契約打ち切りを通告され、収入減・固定資産税支払い困難で困惑してみえました。

 相談会実施後も問い合わせがあり、2月24日(日)には、フィリピン8名への生活困窮の相談対応も別途実施しました。

 

【6:第2回相談会・まとめ】

 ソニー美濃加茂サイト閉鎖後の2回目は、生活困窮の相談が多くありました。多くの外国人労働者は、雇い止め後、新たな就職ができずに、雇用保険給付も打ち切られ、そして、生活困窮となっている実態が浮き彫りとなってきました。相談者の中には、「知人から借金をして暮らしている」、「現在、友人宅に居候中」、「アパート代を10万円以上滞納」等、深刻な事例も多くありました。

 相談内容(重複有り)は、生活相談(生活保護・福祉資金・借金など)17件、住宅相談(寮等からの退去・新たな住宅・住宅ローン)3件、税金相談7件、社会保険相談8件、雇用保険相談6件、職業訓練相談7件、医療相談2件、労働相談(解雇・雇い止め・配転・有休・賃金など)2件、その他3件でした。 

 今後のフォローとしては、制度活用目的の申請に同行が確定:6件(制度の内訳は、生活保護2件・住民税減免4件・国保料減免3件/重複有り/)、制度活用目的の申請に同行する予定:5件(制度は、生活保護5件)、労組対応:2件(賃金未払いで労組結成・団交と労基署活用1件、解雇で労組加入団交1件)、困ったら再相談:8件でした。

 相談会実施の翌日には、美濃加茂地域のアジア友の会代表の方より、食料支援のことで問い合わせがあり、4月19日(木)には、その方と実行委員会とフードバンクぎふのメンバーが面談してきました。同友の会には、多くにフィリピン人が会員となっており、生活困窮者も多く、今後、継続的に食料支援と共に相談対応もしていくこととなりました。

 

【7:ソニーによる美濃加茂サイト閉鎖による禍の特徴、及び、今後の課題】

 4月時点で、岐阜県の発表では、加茂地域に1000人以上の失業者が溢れています。こうした事態は、岐阜県にとって過去にあまり例がない深刻な事態です。

 失業者の多く(どんなに少なく考えても半数以上)は、ブラジル、フィリピンなどの非正規労働者であった外国人であり、日本語能力の不足もあり、新たな就職先を見つけることが相当困難となっています。ソニーの場合は、企業規模が大きく、通訳体制もあり、外国人を集団的に効率よく就業させることができる状態であったと考えられます。しかし、中小企業では、外国人労働者の場合は、まずもって日本語能力が求められるはずであり、その能力が無ければ、新たな就職は困難と思われます。外国人の中には、加茂地域に定住を決意している場合も相当あり、また、加茂地域での同国人内の「コミュニティ」のことを考えると、転居や帰国となる例は少ないと考えられます。逆に、日本人の非正規労働者の場合は、加茂地域を離れている事例が多いと考えられます。

 こうした禍の元凶はソニーであり、ソニーの社会的責任は厳しく追及されなければならなりません。「対策会議」や「県民の会」がこのソニーの責任追及の運動を継続して取り組んでおり、自治体や国、また、国際世論にも訴えていくことが必要と考えます。

 こうして、ソニーになんらかの責任を取らせつつ(跡地での新たな事業展開、失業者への経済的支援など)、加茂地域において、新たな雇用創出を、外国人労働者も就職に結びつく形で実現していくことが、問題を解決する方向であると考えます。そのためには、「対策会議」や「県民の会」が、岐阜県や美濃加茂市等に働きかける運動を進めていく必要があると考えます。「対策会議」と「県民の会」は、4月12日(金)に、岐阜県知事に対して、ソニーに対して新たな雇用創出の事業起こし等を働きかけるよう、要請しました。

 以上の問題解決のための運動は大切ですが、即効的に失業者が救済されるわけではありません。当面は、厚生労働省・岐阜労働局管轄の雇用保険や職業訓練制度などの活用と改善、美濃加茂市・可児市等自治体での税金や国保料の減免・生活保護制度の活用と改善の運動を、「対策会議」と「県民の会」がすすめていく必要があります(両団体は、4月30日に岐阜労働局と美濃加茂市への要請行動の予定)。そして、その運動のためには、「対策会議」や「県民の会」が1000人以上の失業者と接点を持ち、結びつき、相談・支援ができるしくみが必要です。

 今、私は、キリスト教教会や外国人の友の会組織との協力・共同のためのつながりを構築中です。また、私は、相談会の活動を通じて、新たに通訳等の仕事に従事している外国人数名と接点を持つことができました。こうした取り組みを拡げていくことが大切と考えます。また、食料を無料で届ける運動をしているフードバンクぎふが最近立ち上がり、2回の相談会でも食料提供をしていただけました。この団体との協力・共同は重要です。そして、やはり、1000人以上の失業者を対象に労働組合への組織化を進めていくことが肝腎です。私は、労働組合とは、職場内の賃金・労働条件を改善して、雇用を守る取り組みだけではなく、労働者の生活全般のことを考え、そして、どんなことでも相談対応ができ、いっしょになって問題を解決をしていくべき組織であらねばならないと最近考えるようになりました。

 最後に一言。やはり、労働者を大切にする法律的なしくみを創っていく運動が、長期間かかるかもしれませんが重要です。私は、労働者派遣法の抜本改正、有期労働契約の入り口規制、工場閉鎖についての規制等で、微力ながら、努力していきたいと考えます。

 

 

 

 

 

「労働契約法勉強会」を開催しました。

事務局次長 白川秀之

 

 改正労働契約法の勉強会を2013年4月1日に愛知県弁護士会3階委員会室で開催しました。参加人数は11名でした。名古屋南部法律事務所の永井敦史団員が講師となり、改正のポイントを講義しました。

 今回の労働契約法改正の目玉の一つは、無期労働契約への転換権であると言えます。この規程は、有期労働契約が更新されて契約期間の通算が5年を超える場合には、労働者の申出により、期間の定めのない労働契約へ転換することができるものです。ただ、5年を超えるまでの間に、一定の空白期間があれば、通算期間を再びリセットされてしまいます。この空白期間については、それまでの通算期間によって以下のように変わってくるため、計算には注意が必要です。

 

通算期間    空白期間となる期間

2ヶ月以下          1ヶ月以上

2ヶ月超~4ヶ月以下   2ヶ月以上

4ヶ月超~6ヶ月以下   3ヶ月以上

6ヶ月超~8ヶ月以下   4ヶ月以上

8ヶ月超~10ヶ月以下  5ヶ月以上

10ヶ月超~12ヶ月以下 6ヶ月以上

 

今回の改正では、雇い止め法理も明文化されました。東芝柳町工場事件、日立メディコ事件の基準がほぼ妥当すると言えますが、条文上「契約の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込」をする必要があり、相談、受任時の対応が重要になってくると言えます。

期間の定めのない雇用への転換と雇い止め法理が両方規定されたことで、期間の定めのない雇用への転換を阻止する空白期間を設けるために、雇い止めをすることは違法になると言えます。ただ、労働者と使用者が更新回数や期間について明確に合意をしていた場合に、雇い止めを無効とすることができるのかについては、今後議論を深めていく必要があると思います。

今回の改正労働契約法は、まだまだ有期雇用労働者の権利保護の観点から不十分な点も多数ありますが、これまで野放しであった有期雇用契約に対して一定の制限を設けたという点で意義あるものと言えます。今後は、この規定を一定の歯止めとして活用し、期間の定めのない雇用への転換規定を実効性あるものにしていくことが重要であると言えます。

 

 

 

 

 

三重県の常設ホットライン開設のお知らせ

 

東海労働弁護団三重地域の常設ホットラインが2013年5月2日から開設しました。開催日時等は以下のとおりです。

 

開催曜日:毎週木曜日

時間:午後5時~7時

電話番号:059-351-6510





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